当社グループ社員より、散文の投稿がありましたので、紹介します。
北の大地の山便り
大自然に囲まれた北海道。海あり、川あり、湖・湿原などその魅力と言えば、食べ物の美味しさと共に正に北海道ならではと言えるでしょう。そんな中でも山に登るのを楽しんでいる私には、道内各地の山々は大雪山系や日高山脈と言った名の知られた山々から地方にある山までどれもがキラキラ輝く宝石箱の如くと言ったところでしょうか。
今回は、皆さんに登山に魅せられた私と一緒に山に登ってもらおうと思います。
では、いざ出発です。
今は朝6時。夏の朝、既に太陽は結構高いところまで昇り、木々の間から差し込む陽の光が燦燦と輝き、緑に抱かれて歩いていると自分の心が洗われる思いだ。仕事同様、登山も自然相手のことなので、いつもこんなに天気が良いとは限らないが、今日は一日期待できそう。山の神様に感謝しつつ、一歩一歩、安全に。
歩き始めて30分。清流を右に見ながら緩やかな登り道を歩いてきたが、いよいよここから本格的な登りに突入だ。伸び切った草木の枝葉が登山道に掛かってちょっと歩きにくいところがあるものの、道はしっかりしているし、これなら何の問題もないな。多少息が上がって汗もかき始めたけど、快調快調。この調子ならあと2時間半もあれば、頂上かな。お、木々の間から見えるあの頂きは今日の目指す山かも。こうやって見るとまだまだ遠そうだけど、気力も充実しているし、今日は楽に行けるかな。
ふー、結構登って来たな。今の時間は7時半か。展望も開けたここで一休みしようっと。今日は、天気も良くて、緑も綺麗で、最高の登山日和だ。それにしても少しお腹が空いたな。いつもの携行食のあんドーナツでも食べておこう。疲れた体には甘いものが一番だし。よし、休憩充分。出発だ。
うっ、なんか臭いなあ。何だ、この獣臭さは? やばい、これってヒグマかも? 熊鈴を思いっ切り鳴らして、こっちに来ないようにしないとまずい。取り敢えず、動かないで様子を見ないと怖いな。こんなところで熊にやられたらどうやっても生きて帰れないだろうし…。
あー、さっきはビビったなあ。もしかしたら、鹿とかキツネだったかもしれないけれど…。熊の落とし物を見ることはあっても、野生動物を間近に感じたのは初めてだったなあ。本当にヒグマだったかどうかは分からないけど、この先も気を付けて行かないとな。とはいえ、ここは鶯の見事な歌声、かすかに聞こえるナキウサギの鳴き声、お花畑に咲き誇るチングルマやツガザクラといった高山植物の可憐なお花も綺麗で、こうして大自然に包まれているだけで気持ちが和むなー。おっ、あそこにはエゾリスも。危険と隣り合わせの山の怖さはあるものの、癒しを与えてくれる景色や動植物などの自然の総てが山の魅力なんだよな。
こうやって景色の開けた尾根道を歩くのは気持ちいいなあ。頂上も見えてきたし、あと少し。ほぼ予定通りの時間だな。行き交う人もみんな素敵な笑顔で挨拶してくれるし、頑張れるよな。
と言ってるうちにもう到着だ。やったー、360度、こんなに周りの景色が見渡せるのも滅多にないな。自分の日頃の行いが素晴らしいからということにしておこうっと。遥か向こうには蝦夷富士と言われる羊蹄山。湖も見えるし、見事な景色で綺麗だなあ。
今のこの時間なら会社が始まった頃で、みんな黙々と仕事をしてるかな。こんな奥深い山の中、電波も届かないから仕事からも解放されて、嫌なこともすっかり忘れられるし、爽快感たっぷりだ。おにぎり食べて、お腹も満たされて、あーこの上なく幸せな気分。
さて、もうそろそろ下りるとするか。リフレッシュできたし、景色は堪能したし、帰ると決めたら、もう一直線。あとは下山後の温泉と食事が次の楽しみ。北海道はどこにでも温泉があるから、山から下りてすぐに汗が流せるのが最高だし。それと、ここは海に近いから入浴後の食事は海鮮丼で決まりだな。自分の好きなものばかりが揃っている北海道って、本当に良い所だよ。
結構下ってきてそろそろ登山口も近いはずだけど、さっきから冷たい風が吹き始めて、日差しもなくなって来たな。向こうから怪しい雲が近づいて来てるけど、大丈夫かな。もう少しだから天気はもって欲しいけど、少し急いでいこう。
ありゃー、やっぱり駄目だ。降り始めたー。山の天気は本当に変わりやすいよなー。雷だけは来ないことを祈るしかないな。おっ、登山口が見えてきた。もう走れ走れ。
最後ちょっと雨に濡れたけど、怪我をすることもなく、無事下山。今日も一日お疲れさまでした。あらためて、山の神様に感謝です。
ぎゅっと詰め込んだ山での一日の様子ですが、雰囲気だけは感じて頂けましたでしょうか? 北海道の山も色々で、ロープウェイで一足飛びに山頂近くまで行ける山もあれば、車でちょっと山道を分け入るだけで、大自然の雰囲気を楽しめる所もあります。新緑・濃緑・紅葉・真っ白な雪に包まれた山など季節季節で装いを変えていつでも私たちを暖かく迎えてくれます。北海道にお越しの折には、「山を楽しむ」というのも付け加えてみて下さい。