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2024年6月「黒島研究所研修活動」参加報告

 当社では、弊社グループ社員に黒島研究所の活動と、黒島の環境を実体験してもらう為、研修活動を行っています。                                                                        今年は2024年6月に3泊4日で実施しました。今回のレポートは、参加者の報告を掲載します。=========================================================================================================

2024年6月24日~6月27日にかけて掲題研修活動に参加した。

≪黒島の特徴≫
隆起サンゴ礁で出来た周囲13kmの平べったい島で、隣の新城島、小浜島、竹富島なども同じような地形。                                                     一方石垣島、西表島は山がある。
川がないため水は西表島から海底のパイプラインを通って供給している。                                                                             川がないのでマラリアの発生が西表島などと比べて少ないことから、黒島の定住の歴史は長いという。

【新城島(左)と西表島(右)】

≪前日の産卵確認≫
西の浜にて、黒島研究所研修生の前田さんが前夜に確認したアオウミガメの産卵場所を、黒島研究所主任研修員                                          亀田さんと共に実際に掘って確認した。                                                                             おおよその場所は分かっており、また、亀田さんが細い金属の棒で砂浜を刺してウミガメが足で固めた部分を探しても、                                    掘り始めてから卵を見つけるまで1時間弱かかった。
産卵直後の卵は、産み落とす際の衝撃に耐えるため柔らかく凹んでしまうが徐々に固くなる。                                                              また、産卵から1日以上たつと胚の位置が決まってしまうため、卵の天地をひっくり返してしまうと                                             胚が死んでしまい、ふ化出来ないのだそうだ。

  
【産卵の形跡と目印】

≪海岸清掃≫
西の浜にて清掃を実施した。                                                                                        発泡スチロール、中国語韓国語のラベルのペットボトル、大小さまざまな漁具が散乱していた。
黒島ではゴミの処理ができないため、フレコンバッグにまとめて、港に搬入し石垣島まで運ぶことになる。                                                        フレコンバッグは全部で5~6個になったものの、西の浜の1/3程度の範囲しか清掃はできなかった。
漂流してきたゴミはペットボトルでも資源ゴミとしては出せず、不燃ゴミとなる。                                                              海外のペットボトルはどのような成分で製造されているかわからず、また砂や塩分が付着しているので、                                                      燃やしてエネルギーに変えることも難しいと思われる。
また紫外線などにより発泡スチロールや漁具は劣化が目立ったが、劣化により細かくなった発泡スチロールを砂浜から
完全に取り除くことは難しいと思われることから、定期的な海岸清掃の必要性を感じた。

【収集した漂流物】

≪牧場餌やり体験≫
黒島は人口221人に対して2800頭の肉用牛を飼育しており、子牛は1頭50万円程度で石垣島や県外の肥育業者に売られる。
島内には立派な競り場もあり、2か月に1回競りが実施される。                                                                      今回餌やりを体験させていただいた牧場でも毎回10頭~15頭ほど競りに出すという。
島内の牧場では主に雌牛と子牛の飼育しており、雌牛は人工授精で子牛を産むので雄牛は子牛の時に売られてしまう。                                               なお牛も人間と同じように熱中症になることから牧場内ではミスト噴射などの対策を行っていた。

【牛の親子】

≪産卵確認≫
宿での夕食後、黒島研究所 中西さん引率のもと西の浜を歩きウミガメの上陸・産卵の探索を実施した。
歩き始めて5分程度で海から伸びる跡を発見した。上陸の形跡でウミガメの種類が分かるといい、                                                            今回見つけたものは交互に手の跡があったことから、アオウミガメよりも体の小さいタイマイであることが分かった。                                               またウミガメの種類によって産卵の場所にも特徴があるといい、タイマイは砂浜の奥の茂みの中、                                                       アオウミガメは砂浜の奥の茂みの手前であることが多い。産卵~穴を埋めるまで1時間程度かかっていたため、                                                  上陸から再び海に戻るまで2時間程度かかると思われる。
また、翌日中西さんより足にあるタグで20年前に標識放流したタイマイだと分かったということを教えていただいた。

【産卵中のタイマイ】

≪標識放流≫
黒島研究所のアオウミガメの重さ・甲長・甲幅を測定し足に標識タグを2つ付けて、港の近くの浜から放流した。                                               この調査によりウミガメの成長やどれくらいの年月をかけてどれくらいの距離を移動しているのか、                                                     また前夜のタイマイのように幼いころに育った海で暮らしていることなどが分かる。

     
【放流したアオウミガメ】

≪対馬丸記念館見学≫
最終日は那覇に移動し対馬丸記念館を見学した。
対馬丸は日本郵船の貨物船の一隻で、太平洋戦争中は日本陸軍に徴用されていた。                                                                  疎開船として民間人や児童ら計約1,700名を乗せて那覇から長崎へ向かう途中、                                                                  1944年8月22日アメリカ海軍の潜水艦「ボーフィン」からの魚雷攻撃を受け沈没し、機長含め多数の死者が出た。                                            正確な乗船者数・死者数・生存者数は分かっていないという。                                                             分かっていない要因の一つとして対馬丸の事件後沖縄が戦場となり家・遺品が焼失してしまったこと、                                                                       残された家族も犠牲になったことが挙げられる。記念館では撃沈までの経緯や米軍の記録、犠牲者の遺影などが展示されていた。

【対馬丸記念館】

【所感】
ウミガメの生息範囲は種類によって異なるが昨今の海水温度上昇により変わってきており、以前タイマイは八重山諸島が北限、                                           アカウミガメは八重山諸島が南限であったが、徐々にタイマイは八重山諸島よりも北でも見られるようになり、                                                   アカウミガメは八重山諸島で見られる数が減っているという。温暖化は異常気象だけでなく生態系分布へも影響を与えており、                                          ただウミガメが産卵できる砂浜を維持できれば良いというわけではないことが分かった。                                                     また黒島は灯りがほとんど無く、日本初の星空保護区にも認定されているという。実際に星座が分からなくなるくらいの星々だけでなく、                                      流れ星やStarLinkTrainを肉眼で見ることもできた。
ウミガメの産卵、黒島の透き通った海、AKARIに乗船しシュノーケリングで見たサンゴ礁、プラネタリウムのような星空など、                                           自分の選択では恐らく経験することがないであろう経験をすることができ、本研修への参加は自身の知見が広がる良い機会であり、                                           また貴重な体験を全面的にサポートいただいた黒島研究所には感謝申し上げる。引き続き海岸清掃や黒島研究所への定期的支援を通じて、                                       KYKとして海への恩返しをするとともに、社員一人ひとりが温暖化やGHG削減に意識を持ち、KYKが向かっていく方向を考えていくことに                                      繋がればいいと思う。

  
【AKARI号】                      【StarLinkTrain】

    2024年6月「黒島研究所研修活動」参加報告

    「AKARI」を利用したドローン調査開始

    第1回 黒島研究所研修

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